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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新・水滸伝(しん・すいこでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 頁

青空文庫

獅子橋畔に好色男は身の果てを砕き、 強慾の婆は地獄行きの木驢に乗ること

「ど、どういたしまして、決して居留守など申すんではございません。さきほど、商用のお客を連れて、いつも行きつけの、獅子橋のお茶屋へちょっと商談にお出かけなんで……」

「きっとだな」

武松は一言、凄ンでみせて、

「そうか。もしそこにいなかったら、すぐにまた、引っ返して、ここへ来るぜ」

ぷいと、身を一転するなり、彼はそこの店頭から往来へ出て行った。

獅子橋畔の繁華な大通りを前にして、一流どこの名代な料亭がある。

武松は、ずっと入って行って、

「ごめんよ。西門慶の旦那は、どちらのお座敷においでかね」

「いらッしゃいまし……。あの、お連れさまでいらっしゃいますか」

「ああそうだよ。おっと仲居さん。案内には及ばねえ」

連れと間違えて、案内に立つ女中の先を追い越して、武松は、とんとんとんと、表二階へかけあがって行った。

つき当りの大廊下から左の広間に、簾を透して、ひと組の客が見える。幾人もの歌妓、女中たちに囲まれて、客二人は上機嫌で、はしゃいでいた。

「居るな」

やにわに、武松はそこの簾を上げて、ぬっと顔を突き出した。

きゃっ――と妓たちは散らかった。そのはずである。何か、血の滴りそうな丸い物を小脇に抱え、しかも、ふと振り向いた西門慶の眼とぶつかった彼の双眸は、なんとも名状しがたい復讐の殺気に燃えていたのだ。