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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新・水滸伝(しん・すいこでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 頁

青空文庫

耳の飾りは義と仁の珠。宋江、 友の危機に馬を東渓村へとばす事

「おいおい、菜などは何でもいいが、大急ぎで朝飯を食わせてくれないか。……なに、もう午近いッて。ははあ、おれには朝飯だが、人には午飯だったのか」

夜どおし隣県から馬をとばしてきた刑事頭の何濤は、とにかくと、役署前の一軒へ入って、腹ごしらえにかかっていた。

「へい。どうもお待ち遠さまで」

「ああ腹が減ったよ。ところで、亭主」

「へい」

「さっきから、こう役署の正門を見ているんだが、べつだん休日でもねえのに、妙に今日は、ひッそり閑としているじゃあねえか。なにかい、県の知事さんは、午過ぎでもねえと、役署へは出ないのか」

「いいえ旦那。お役署の混雑は、午まえに一ト片づきして、訴訟人や役人方も、今はみんな昼休みってえとこでございますがな」

「ははは、ちげえねえ。こっちの頭が、時間をとッ違えて見ていたわけか。……じゃあ、ちょっと訊くが、この県の押司(県城の書記長)は、なンてえお人だね?」

「旦那旦那。……ほら、ちょうどいま、そこへおいでなすったお方が、県の押司さんでございますよ」

「え。どこに」

床几を立って、何濤は、亭主の指さす方へ眼をやった。

――見ると、なるほど、押司の制服を着た一名の県吏が、今し役署の広庭をよこぎッて正門から出てくるところだった。