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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 186,659 字 · 372 頁

青空文庫

そして、しとねに坐るなり、すぐ云った。

「信雄卿には、急に、考え直されて、筑前と手をにぎられたそうじゃの」

「はいっ……」

と、二使は、平伏して、顔も上げ得ず、そのまま答えた。

「このたび、羽柴どのと、事遽かに、和談な仕りました儀については、さだめて御当家にとられては、意外とも、心外とも、思し召しは、恐察のほかござりませぬが、それには、主人信雄様にも、事実、一方ならぬ遠い深慮やら眼前の事情もあることでござりまして……」

「察しる。いや、その辺のことは、くどう御説明には及ばぬ」

「委細は、この御書状のうちに、るると、お認めのよしにございますれば、何とぞ、御披見を」

「ウム。あとで、ゆるり、拝見しよう」

「御立腹もあらんかと、それのみ、主人には心をいため抜いておりまする」

「何の何の、御斟酌には及ばぬ。もとよりこのたびの戦は、家康の私心私謀に出たものではおざらぬ。――お身たちとて、その発端の儀は、しかと、お分りであろうがの」

「よく分っておりまする」

「さすれば、何もかも、信雄卿の御運命よかれと願う一途のほかに、きのうも今日も、家康の心はすこしも変りおざらぬわけよ。……無用な御心痛はなさらぬがよい」