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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 186,659 字 · 372 頁
梨ノ木峠を、西すれば、吾妻野から大海川――の北に出で、能登街道の加賀の口、末森城の、側面に出る。ようし。敵の末森城は、そこにあるなれ」
と、にわかに、覇気を、盛りかえし、望むところの、焦点をつかみ得たように、
「行けっ。行こうっ」
と、指さした。
「能州、末森城は、敵の七尾と金沢をむすぶ街道第一の要害。――津幡、鳥越などの小城を幾つ踏みつぶすよりも、そこ一つの方が、はるかに勝るぞ。末森城を、わが手に陥せば、前田勢の敗勢は、いちどに崩れ出そう。――二日前の山中の迷路は、かえって、天が我らをして、小功を捨て、大功に導いたものと思わるる。奮えや、者ども」
さすがに、かれも、老巧の武門だ。禍を転じて福とする――いわゆる用兵上の将語をやはり心得ている。
軍馬は急に、目的を変え、梨ノ木の頂さして登り出した。もし、そこに立って、霧の晴れまに、西方を望むならば、裏日本海の、鯖の背のような海洋を長く区切る半島線の一端に、白壁、石垣、やぐらなどの、末森城の影を、指呼する距離に、望み得るであろう。
やがて、佐々軍二万が、そこを越えて、西する頃――途中、姿を消した田畑小兵衛が、一つの峰から、遠く兵馬のさして行く方角を、手をかざして、見まもっていた。