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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 186,659 字 · 372 頁
それに、同意なのは、家康だけだった。他のすべては、三河武士の勇猛あるを知って、高速な時代の文化や武備の進歩を知らない田舎武者の智識で、依然、大坂を過小視する者ばかりだった。
対石川数正への非難や、かげ口が、
(ふた股者よ)
(獅子身中の虫だ)
などと、いよいよ露骨になって来たのは、秀吉と信雄の単独講和に、家康が置き去りをくって以来、事々に、徳川家の不利が目立って来た、この半年の間だった。
家康の耳にも、折には、かれの名が、危険なる人物として、聞えてきた。
が、家康は、
(数正の考えは理由のあることだ。疑われては心外であろう。気のどくな立場ではある)
そう察して、自分のしている忍耐を、数正も共に、忍耐しているものと、家中のうるさい声には、つんぼを装うていたのである。
――だが、数正には、家康ほどな忍耐にはたえない。また、彼の人生観が、
(なんで、そんな我慢に、耐えている必要があるか)
と、ささやく。
武人の人生観の裏には、常に“死”がある。今朝あって夕べは知れない。その儚い短い生涯を、針のむしろに耐えて、井の中の蛙みたいな事大主義の連中からまで、何で、猜疑され、軽蔑され、ひとり怏々と日蔭者じみた日々を過ごしていなければならないか。