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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 頁

青空文庫

回顧すれば、もう十数年前になる。信長が、斎藤義龍の岐阜を攻めるに当って、金華山の峰つづきを、その裏山から攀じて奇襲したとき、山中で道案内をした一樵夫――まだ十六、七歳の、山家育ちの若者こそ、今日、寄手の一方に、一部隊をあずかり、人後に落ちない武者振りを見せている――この堀尾茂助であった。

ふと、今も、

「はやいものだのう」

秀吉は思わずにいられなかった。わが息子の育ったのを見るような眼でながめた。

「よくお旨を奉じて、行って参ります」

茂助は、この大役に、感謝した。懸命な容子が顔いろに出ていた。

「待て、待て」

立ちかける茂助へ、秀吉は念を押すようにいった。

「この使い、できそうか。自分に問うてみて、――」

「はい。きっと」

「さきに藤堂家の臣は、即座に斬られておる。覚悟はあるか」

「もとより、事不調の節は、生きては帰らぬ所存にござります」

すると秀吉は、急に不きげん極まる顔をして、

「坐れ。もう一度そこへ坐れ」

と、叱った。

堀尾茂助は、坐り直した。なんで急に秀吉の叱りをうけるのか、彼には分らなかった。

「使者のつとめは、使者の役を完全にしとげるこそ、本分というもの、それ以外の覚悟など要らざることだ。