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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 頁

青空文庫

かねて、秀吉は、長浜の自分の家庭へ、主君信長の四男於次丸を、養子として乞いうけ、妻の寧子と、留守中さびしげな老母とに、それをあずけて中国へ来ていた。

その於次丸も、いつか、元服の年ごろとなった。それかあらぬか、秀吉は、この春以来、

「武将の子だ。陣中の困苦にも馴れねばならん」

と、長浜へ迎えを出し、わざわざこの戦場の地へ、わが子を呼びよせておいた。

ときには、前線に連れて行って、風雨にも打たせ、飢餓も味わわせ、怖い中を歩かせたりしていた。

「あんなにも厳しくなさらないでも」

と、士卒たちが、傷ましがるようなことも、秀吉は、知らぬ顔していた。

こんど、麦飯山の出征には、兵力一万五千が発向を命じられている。秀吉はもちろんそれに対して、老巧な臣と、勇敢なる若手の将を、部隊部隊に配しはしたが、総大将としては、

「於次にそれを命じる」

と、発表したのである。

そして、初めて軍の上に立って、戦いへ臨むわが子を招いて、

「よく、習んで来いよ」

と、云いきかせた。

勝って来いとも、死ぬ気で行けともいわなかった。時に、於次丸はまだ十四歳だった。

やがて十二月の中旬ごろ、於次丸の軍は、功を遂げて凱旋した。