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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 頁
「……御無事なお姿を拝しまして」
母里太兵衛、井上九郎、栗山善助――そう三人のうちの誰かが云ったが、嗚咽をのんで、辛くもしぼり出した声なので、それは低くふるえ、異様にかすれて、よく言葉の意味も聞きとれないほどだった。
しゅくしゅくと、三人はただ泣いていた。欣し泣きである。男泣きである。戦場に立っては、鬼神もひしぎ、家庭にあっては、平素でも、泣くことを知らないといわれている人々が、ほとんど、手放しで、慟哭していた。
「…………」
茫然、官兵衛孝高も、いうべきことばを知らなかった。欣しくもありまたすまなくもある。子飼のこの者たちが、きょうまで、陰にあって、これほどまで自分の救出に苦心していてくれたということを――いまは眼のあたりにある三名の変り果てた姿に見たからである。
三名とも、各※(二の字点、1-2-22)、旅商人に身を窶していたが、その容貌までを変えるため、母里太兵衛は、片鬢の毛を、焼ごてで焼いて、わざと大きな禿をつくっていたし、栗山善助は前歯を数本欠き、井上九郎は、元々、片眼を戦場でつぶしていた勇士だが、そのうえに、面に焼きあばたを作って、ふた眼と見られない顔をしていた。