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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,757 字 · 375 頁
ここはこの夏、光秀の敗れ去った旧戦場であった。その前までは、古びた一宿駅に過ぎなかった寒村が、いまは活気ある城下町をなさんとしていた。淀川を渡るとすぐ望まれるのはかなり大規模な改修計画と見られる宝寺城の丸太足場であり、通路は牛馬の轍で縦横にえぐられ、耳に聞えてくるものもすべて秀吉の旺なる意欲の縮図と観られないものはない。
「これでは?」
と、利家すらも、秀吉の心事を疑ってみたい気がしたほどである。柴田、滝川、また三七信孝などが、何かにつけてよく秀吉攻撃の口癖としている――
(筑前こそ、清洲以後は幼君のお傅りも怠って、ただ偏に、私利私慾の営みに汲々とし、洛内においては、私権を恣にし、洛外においては、事もない今日、憚りもなく、堅固な築城に莫大な費えをかけている。西域北辺なら知らぬこと、いったい中央の地で、誰をあいてにする軍備か)
という声をふと思い泛べたからであった。
それにたいし、秀吉はまた秀吉として、
(清洲会議で定められた――三法師君を安土へ移し奉るという約も今もって実行しないのはなぜか。故信長様の御葬儀について諮っても、一片の返書すらなく、袖を連ねて参列せぬは如何なる意か。