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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,757 字 · 375 頁

青空文庫

家康

兵馬、軍糧、そのほかの備え、すべて雪のうちのこと。おぬしらも抜かりあるなよ」――と。

時にまた。

一方の秀吉は秀吉で、その側臣にこう語って、大いに嘲っていたということである。

「そもそも、われらを謀らんほどの者は、異朝にては子房、わが朝にては、楠多聞兵衛にてもあれば知らぬこと、柴田なぞが、愚意をもって筑前を謀らんなどは笑止の沙汰じゃ。見ておれ。蟷螂の斧とは、このことぞ」

家康

天正十年はかくて暮れんとしていた。さらに多事いよいよ多事を予想さるる天正十一年は迎えられようとしている。しかも黙々の天機運行の下、人は、来るべき年が地上にとっていかなる現象を事実となす年かを寸前にも知ることができなかった。それが悉くの地上の人であった。

ただわずかに、その大きな未来の空間をみつめて、一箇の胸三寸に、天、地、人、三運の神機を捉えて、克く自己の掌上に日月のうごきと麾下百万の生命とを照らしみながら、

――明日は、かく。

――来年は、こう。

と、あきらかな予見と信念のもとに、遠大な方図を徐々に進めながら、この時の「時」を歩んでいる極く少数の人物のみがまたべつにあった。

こういう特異な人物は、そう沢山にあろうはずはないが、どんな乱麻と暗澹を呈している時流の中でも、かならずどこかにいることはいるのである。