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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,757 字 · 375 頁

青空文庫

良き家、良き妻

馬印をもすぐ受けて、そこに立てた。総帥の在るを示して、この先鋒隊の位置が、即、中軍となったことを顕わすのであった。

「昨夜中、府中城のうごきは、どうあったか」

秀吉の問いに、

「別条もございませぬ」

と、秀政は答え、

「しかし、なかなか意気まいておるやに見られまする」

と、いい足した。

「ふうむ、固めておるか。筑前との一戦必至と」

自問自答して、秀吉は、そこの丘から、府中の方角を見ていたが、唐突に、

「久太郎、要意せい」

と、布令を促した。

「御出馬で」

「もとより」

坦々の大道を望むような頷きであった。秀政はすぐこれを秀吉の各部将に達し、また自身の先鋒隊にも貝触れを出して、まもなく、きのうの通りな序列で行軍を起した。

府中までは一刻を要さない。秀吉は久太郎秀政を先駆させて、先鋒のうちに在った。はや城壁が見える。城方の緊迫はいうまでもなかろう。位置をかえて、城頭から望めば、駸々と迫って来る兵馬の奔流と、千瓢の馬印は、さらに、手に取るように見えているはずである。

(――駐まれ)

という令が出ない。秀吉の姿はなお馬上に見える。で、先鋒隊の将士は、さてはこのまますぐ包囲態勢につくものと思った。