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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,757 字 · 375 頁

青空文庫

蕗のとう

時により、所に応じ、適当に速やかに事を践むのが慣例だった。それかあらぬか、今年は大晦日と元旦とが一しょになった。天正十年中の御用仕舞と共に、家臣たちは、湯にも入らず式服を着て、暗いうちからぞろぞろ年賀に登城して来た。やしきへ戻らず、そのまま、城中にいて、屠蘇をいただいた者も多い。

雑煮の香が、満城にただよい、鼓の音など流れて半日すぎた。――と、午の頃、にわかに、

「姫路へ御下向じゃ」

と、奥から触れ出された。何たる急。何たる暇なしである。ことしもまた忙しい前表であろうぞ――と、人々は多忙を楽しむごとく、その準備に駈けずり廻った。

蕗のとう

秀吉が姫路へ着いたのは、元旦の日もほとんど夜半に近い頃だった。

先駆けした一家臣が、馬の脚力のかぎり急いで、前もって、それを姫路へ報らせはしたが、姫路の城でも、まったく思いもうけぬことだったので、

「それは――」

とばかり上下を挙げて、久々な主人の迎えに、大さわぎの体だった。

この姫路へは、秀吉が中国を離れて、山崎の一戦へ赴いたときから、実に初めての帰国だったのである。

ここには、その折残された腹心の家来、家中の者、その家族らも、沢山いた。