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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,757 字 · 375 頁

青空文庫

彼の旺盛な戦意や日頃の性格からしても、月余にわたる無為に似た長陣は、もはや到底耐えきれない鬱屈となりかけていたにちがいない。

「――いや、慾をいえば限りもないこと、山路将監の誘致が調うただけでも、この際、まずまず祝着とせねばなるまい。どれ、早速に北ノ庄殿のお耳へ達しておこう。……安政、おぬしは勝政(末弟)とよく計って、明朝山路が内応の合図を見さだめ、抜かりのう手配しておけ」

「畏りました」

「新六には、いずれ後日、御褒美のお沙汰あろうぞ」

「ありがとうぞんじまする」

安政と新六とは、先に立って、自陣へ帰って行った。玄蕃允は小姓をさしまねいて、愛馬“青嵐”を彼方から曳かせ、武者十名ほど具して、そこから直ちに中尾山の本陣へ向って行った。

行市山から中尾本陣までの軍用路は、幅二間の新道で、蜿蜒二里余、ほとんど嶺の上を縫っていた。折ふし満目、深山の春である。名馬青嵐を打たせてゆらゆら行けば、玄蕃允の荒胆にも月花の風流ならぬ歌心が、しきりに胸を往来した。

中尾山の本陣は幾柵にも囲まれている。彼は木戸へかかるたびに、馬上から一言、

「玄蕃允ぞ」

と、名乗るだけで、衛将番卒を見下ろしながら、通って行った。