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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,757 字 · 375 頁

青空文庫

ここは本山の本丸小屋だ。――本山というのは、堂木山、神明山の総称である。以前は、山路将監が坐っていたが、秀吉が、配置代えを命じて、山路や大金を外曲輪に出し、木村隼人佑重茲を本丸へ入れたのは、つい先頃のことであった。

「――何者だ? 叩くのは」

柵の内から、武者の顔が外を覗いた。闇に佇んでいる顔は一人らしい。

「大崎殿をお呼び下さい」

とその者は外からいう。

番士は叱って、

「名をいえ。どこの某と、先に申せ。さもなくばお取次もならん」

「…………」

外の人影は去りもしない。雨に似たものがぱらぱら打つ。墨のような天である。

「――ここでは、ちと申しかねる儀です。怪しい者ではありませぬ。ここの木戸組頭、大崎宇右衛門殿に、柵までお顔を拝借いたしたい。この通りお願い申す」

「味方か」

「知れきったこと、この辺りまで、敵をやすやす歩かせる程、御守備は粗漏でもありますまい。また、敵の隠密などなら、かくは木戸を叩きなど致しませぬ」

筋の通ったことばである。番士は頷き合っていたが、やがて部将の大崎宇右衛門へ通じたらしい。宇右衛門が近づいて来た。

「何じゃ。外の者」

「大崎殿ですか」