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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,757 字 · 375 頁

青空文庫

「堀尾どの、堀尾どの。おゆるしを得たぞ。出て来いっ。お礼を申せや」

と、大声で伝えた。

堀尾茂助は、駈け出して来た。二人して、大地に平伏した。しかし、びゅっと風に鳴る鞭の音がしたのみで、秀吉の馬はもう彼方へ駈けていた。

「あっ、お立ちぞう」

それには侍側の面々すら、不意をくッて、われがちに、

「おくれるなっ」

「おくれては――」

徒歩で走り出す者、馬上へとび乗る者、列なく纂なく、わっと、またどっと、主人のあとを追って一斉に発した。

時に、時刻はちょうど未の頃(午後二時)であった。飛脚の第一使が着いてから、秀吉の発するまで、実にまだ一刻(二時間)しか費やしていない。

その一刻のあいだに秀吉は、江北の敗れをもって、むしろ天与の勝機と断じ、立ちどころに、全軍の大方略を一決し、乾坤一擲の大道十三里余にわたる途々の布令まで先駆させて、ここに肚も態も、

「よし!」

となすや、総勢一万五千の真ッ先を疾駆して行ったのもまた、彼自身であった。

羽柴軍二万のうち、五千は後に留められ、一万五千が、旋回一路、秀吉に続いたのである。

しかし、先頭一騎駈けの秀吉の姿に、辛くも追いついていた者は幾人もなかった。