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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,757 字 · 375 頁

青空文庫

二日にわたる激戦中、前田父子の陣地だけは、たとえば乱雲の中に寂としている一叢の静林にも似ていた。

もし彼が、積極的に玄蕃允盛政と力を協すとしたら、茂山、足海の線でも、長途の兵たる秀吉方をして、ああまで思いのまま蹂躪させるようなことはなかったろう。

彼の近臣、小塚藤兵衛、木村三蔵、その他数輩は、力戦して、ここに死す――とは「前田創業記」などにも見えるが、その力戦も、実は、消極的な退軍の怪我だったに過ぎない。

為に、戦後には、

(前田父子は、あの日すでに、前夜から秀吉の密書をうけて、当日の裏切を約していたものだ)

と、世上から推察され、

(そういえば、あの前夜、前田どのの陣中へ、百姓ていの男ふたり、書状をたずさえて御陣中へ紛れ入り、その夜半から、茂山の篝が、わざと明々と、朝方まで焚かれていた。あれも、秀吉方へ応ずる、何かの火合図であったとみゆる)

などと巷の批判まちまちであったが、これは、巷説の常として、少し穿ちすぎている。事実はいつも複雑に似て単純だ。それを複雑怪奇にするのは、世上の臆測観察の業である。一の実相にたいして、分解に分解を試み、さらに分解を附加して、相迷うところから生じるものに他ならない。