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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,757 字 · 375 頁

青空文庫

それのみを、せめてと、独りおなぐさめ下さいませ)

と、心に念じたことを察するに難くない。敵は早や、声の聞えるところまで、四方から、近々と迫っている。

「勝兵衛、馬簾を守れ」

勝助は、弟へ云いながら、顔へ“面頬”を当てた。――勝家なりと名乗って、すぐ敵に面を知られないためである。

五、六発、耳近くから、銃弾が飛んで来た。

それをきっかけに、三十余名、一斉に、身を伏せ、起すや否、

「八幡照覧」

唱え合わせて、敵へ当った。

およそ十二、三名一組ずつ、三手に分れて、敵を目の下に、斬って出たのである。喘ぎ上って来た方は、到底、この決死の形相の前には立ち得なかった。真っ向に、太刀を浴び、胸いたへ、鑓をくい、早くも、いたる処に惨たる犠牲を、出してしまった。

「死をいそぐな、面々」

勝助は、一たんさっと、柵の間へ退いた。彼のいるところに、金幣の馬印は添い、馬印の行く所に、味方は駈け集まる。

「五指ノ弾クハ一拳ニ如カズ――だ。しかもこの小勢、散っては弱まる。進むも退くも、馬簾の下を離れぬように」

戒めて、また飛び出した。――斬って斬って斬り捲くり、突いて突いて突き捲くり、風のごとく、塁の間へ引く。