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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,757 字 · 375 頁

青空文庫

けれど、そういう時に限って、人すべてが、天も観えず、地も見得ぬような、狭小な心殻にとらわれているので、人は、人の中からその人を見出すことすらできないでいるらしい。

為に。一般多くは、心の支柱を、柴田に倚せて見、羽柴に寄せて見、毛利に寄せて見、上杉に寄せて見、徳川に寄せて見、北条に寄せて見、或いは織田遺族の信孝や信雄などに付託して、

(誰かがやがてはこの日本をもっと日本らしき相になすであろう)

とは期しているが、さてその人が以上のうちの誰かとなると、これはまったく判定がつかなかった。――後、歴史としての結果が明確にされた頃に至ってみれば――どうしてそれくらいな見通しがつかなかったかと怪しまれるほどのことも、天正十年末の時局下には未だ、そこまでの秀吉の業績や人間を眼に見て来た者でも、

(この人に、信長ほどな器量があるかどうか。ここまでは意外な神速と才腕を見せて来たが、この辺が精いッぱいな弓勢ではないか)

などと自分自分の尺度にあてがって、次期の蹉跌を危ぶむ気もちも多分だったのである。それほどに当時なお人が人を見出すに模索の域を出ていなかった証拠には、翌天正十一年春となって、いよいよ柴田羽柴の衝突不可避と定まり、各家その旗幟を両陣営のいずれかに拠り所を明らかにしなければならない日になってから初めて、