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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,757 字 · 375 頁
――今日はすでに、秀吉も、ゆるすところとなっているし、父子の大義に拠って来た真情も認められて、かく秀吉の優遇はうけているが、秀吉が見るに、藤孝の糸鬢はたしかにあの頃から急に霜となっている。――ああ、達人なるかな、と思うと同時に、大局に立って誤らぬには、人間やはりここまで肉体と髪の黒さを削らねばならぬか――と、秀吉は彼を見るごとにそぞろ気の毒になるのだった。
「湖上からも、城下からも、はや鼓を鳴らしてお取詰のように見られますが、せがれ忠興にも、先手の一攻め口を、どこかお与え下されますように」
藤孝のことばを、秀吉は、
「長浜か」
と、まるで目標外のもののように云って、さて、それとは切り離して答えた。
「水陸からやってはおるがな。……何、何。真の攻め口は、城の中にあって、城の外にはない。多分、今明のうちには、城を捧げて、伊賀守勝豊の家来どもが、これへ参るであろうよ。――お許らにはまず長途のつかれを充分に休めておられい」
藤孝は、秀吉の今のことばに思いあわせて、ふと、
――克ク人ヲ休メ得ル者ハ、又克ク人ノ死力ヲ用イ得ル者也
という古語の滋味をあらためて心のうちに噛みしめていた。