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もめんいぜんのこと
木綿以前の事
柳田 国男
線上閱讀柳田 国男《木綿以前の事(もめんいぜんのこと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 177,586 字 · 348 頁
昔は学問のことを勉強と謂っていた。何か一つの目的のために、強いて勉めて我慢をして学問をしたのであった。多くは新たなる職業のためであった。家々の灯火が明るくなってから、そんな必要の無い人も、楽に世の中のためにまたは愛する者のために、静かな時間を読書に費すことができるのである。
人が自分に入用なだけの学問を、勉強して修めている間は、まだ人間社会の全体を、これに由って改良する見込みは立たぬ。少しでも余裕の有る者が、他を助ける心持で、本を読みまた考えるようにならなければ、次の代は今よりも幸福にはならぬのである。
大抵の家の主人は、生活の仕事が非常に忙しくなった。世の中もすでに行詰まって、棄てておいても自然に繁栄するほどに有望でない。正しい学問ばかりが国を済うことを得るのであるが、現在まではまだ誰が出てその任務に当るという者も無かった。そうして人は個々の奮闘に疲れようとしている。
幸いにして彼らの家庭には余った力があり時間があり、親切と愛情とがある。またこれを照すところの明るく美しい家の光がある。どうしても今後の学問は、家庭に入らなければならぬ。
或いは家々の事情に由って、その余裕のないという場合があろう。