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もめんいぜんのこと

木綿以前の事

柳田 国男

線上閱讀柳田 国男《木綿以前の事(もめんいぜんのこと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 177,586 字 · 348 頁

青空文庫

三

一旦声息の相通ずるに至れば、同じ国土に生まれてまだ幾代とも隔てない我々に、理解と感動との得られないはずは無かったのである。それが風俗慣習の僅か片つらの変化の故に、かくまで物遠く眺められていたのは不自然であった。歴史を一つの温か味のある学問とするためにも、我々はもう一度、古今の俳諧を見直さなければならなかったのである。

三

連句の不可解になって来た今一つの理由には、時代が改まって人の注意が脇にそれたということもあった。それを裏から言うと、この今人から敬して遠ざけられているものの中に、かつてはさしも痛切であった人生の断片が、もう忘却せられて封じ籠められているのであった。それがいかなる種類の経験であったろうかを、知るだけならばそう難いことでもない。数多い俳諧の巻々を見渡して、終始咏歎の目的となっていた問題は限られている。それが我々の陰に陽に、今なお思い悩んでいる社交感覚、殊に血縁の恩愛義理、または男女の仲らいというがごとき、古今を一貫した不変の法則でも有るように考えられているものであって、しかも瞬く間ばかりの時の経過によって、早くもこうした暗中摸索を事としなければならぬに至ったということは、それ自身がまず興味多き一つの発見であった。