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もめんいぜんのこと

木綿以前の事

柳田 国男

線上閱讀柳田 国男《木綿以前の事(もめんいぜんのこと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 177,586 字 · 348 頁

青空文庫

四

四

別の言葉をもって言うならば、近世農村の労働組織は、たといカラゴキ・カラウス等の輸入がなくとも、なお必然的に変化すべき時運に面していたのであった。ただその中でも特に稲扱用器の改良が、大きな影響を与えたというのみである。同じ新規の器具方法でも、単にいわゆる労力の改良に役立ったのみで、組織の方面にはあまり働きかけなかったものも多い。比較対照のために爰にカラサヲの例を挙げてみると、是も明らかに支那から入って来たものであるが、この方はかえって新たに一種の共同作業を促している。日本の籾落し方法は、つい最近まで実は各地区々であった。一方鉄製の扱箸がすでに知られている処があるのに、他の一方には二本の竹箸よりもさらに原始的なる脱穀作業があった。日本の農村生活の変遷を窺うべき好史料に、吾山という俳人の編輯した『物類称呼』五巻がある。安永四年の序文を掲げてあるが、その中にはすでに遠江のカナコバシ、西国地方のセンバゴキ(千把扱き)の名が見えている。しかるにそれよりも二十何年の後、西暦一七七七年に来朝した和蘭甲比丹ツンベルグは、その江戸往来の旅行において次のような見聞をしている。