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もめんいぜんのこと
木綿以前の事
柳田 国男
線上閱讀柳田 国男《木綿以前の事(もめんいぜんのこと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 177,586 字 · 348 頁
古風な田舎の仕事唄などの中には、稀にはそれと同様な情景創造もあったか知らぬが、少なくとも世の文学と称するものの間には、是ほど手際よくまた物静かに、効果を挙げていたものは絶無である。他国に比儔がない故に文学の定義に合わぬなどと言ってはいけない。むしろ文学の考え方をこそこれに準じて改造すべきであったのだ。
それも談林の大言壮語時代ならば、まだ是を一種の遊戯、いわゆる火まわし尻取文句の改良したものとも評し得るか知らぬが、正風初期の俳人たちのごときは、各自の生活経験の最も大切なものを是に持ち寄って、それを彼らの愛するメロディに順序立てて、心から悲喜し哄笑しようとしていたのである。純一なる彼らのエクスタアズは、二百余年の雲霧を隔ててもなおこれを窺い知ることができる。こういう謎のごとくまた楽屋落ちに近い表現法の中から、辛苦して私たちがその本主の心持を把えようと努めるのも、要するにただこの人たちだけの、語ろうとしていた真実があり、これを通じてでなければ消え去った或る昔を、復活させて見る途が無いからであった。何よりも有難いと思うことは、多くの古い知識は只からびた葉のような形で保存せられているに反して、俳諧の事物は各※(二の字点、1-2-22)その当時の活きた姿のままで伝わっていることである。