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もめんいぜんのこと

木綿以前の事

柳田 国男

線上閱讀柳田 国男《木綿以前の事(もめんいぜんのこと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 177,586 字 · 348 頁

青空文庫

三

そうしてその無識の惰性は、かなり強力なまた怖るべきものだったのである。

三

右の三つの宿題に向かっては、残念ながら私はただ片端しか答えを得ていない。未来の多くの研究者の協力を募るべく、今はただその解説の一つの方向を指そうとするのみである。俳諧または誹諧という言葉は、日本の古文学の中にも見えている。そうして勿論支那からの輸入であるが、この語この文字をあてはめた内容は、輸入以前からあったものと考えられる。二つの国の言葉の対訳が当っていたかどうかは、こういう無形名詞ではいつも問題になるが、この場合だけはそう大きな喰い違いはなかったようである。人の笑いというものの範囲は弘いけれども、俳諧が目的としていたものはその全部ではなかった。笑いの一番に下品なものは放恣、いわゆるしもがかりの秘密や欲情の満足に伴なうものであり、その最も有害なものは嘲罵であろうが、この二つのものは支那の方でも、誹諧のうちに含まれていなかったことは、『史記』に見えている東方朔の滑稽が、宮廷で行われていたというのでも察せられる。日本の誹諧も上流の文学の中にもてはやされていた。直接相手を傷つける笑いでなかったことは明らかである。