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もめんいぜんのこと

木綿以前の事

柳田 国男

線上閱讀柳田 国男《木綿以前の事(もめんいぜんのこと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 177,586 字 · 348 頁

青空文庫

七

七

中世の連歌道においても、附句の制限はかえって俳諧よりも多く、去嫌いとか打越しとかのやかましい沙汰があって、それはいずれも個々の句の変化、場面の展開を念としたものばかりであったが、その分立には限りがあり感情の波動は小さかった。殊に作者の立場用意が相似ていた上に、道中が少し長かったために、どうかするとまた同じ処へ戻り、総体を通観すると板のような感じを免れなかった。俳諧はつまりその単調に堪え切れずして起こったのであるが、芭蕉翁の到達しても、実はまだ完全にこれを打破したとは言えない。我々はむしろ非常に愉快なる革新傾向の、中途にして停頓している姿を見るのである。この一つ一つの附句によって作られる変化、歌仙でいうなら三十五面の新情趣・新関係を、私たちはタブロオと呼んでいるが、これを絵様と謂ってもまた場面と呼んでも、実は幾分か目の感覚に傾きすぎる非難がある。この中には前に挙げた「黄昏を横にながむる月細し」のごとく、完全なる無声の詩もあるが、一方にはまた「棘の中のギス」およびその次の句のような、耳に訴えようとした情景もある。支那の聯句はもとよりのこと、俳諧でも談林派の時代までは、是をただ言葉の続きがらのように、考える癖が止まなかった。