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もめんいぜんのこと
木綿以前の事
柳田 国男
線上閱讀柳田 国男《木綿以前の事(もめんいぜんのこと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 177,586 字 · 348 頁
がいずれの時代にも、失礼ながら婦人には常に少しずつ、右申す晋の恵帝流があった様子である。
善人ではあるが世の中のことは考えないという人がある。元はそれでもよかった。それでも良い奥さんであった。また外からもこれを当り前と認めていた。しかし今日のごとく、男子の多くがまだ公を患うるの余裕なく、純然たる個人生活に没頭して生きねばならぬという世の中になると、我々はどうしても天下万人のためにも、弘く考え得る良妻賢母を要求せねばならなくなる。最近数十年間の新しい改良意見には、いかにも女性でなくてはと思うようなやさしい考案も多かった。しかもその大部分は狭いわが家庭内の苦い経験、或いは痛切な観察に基づいている故に、一言にして言えば貧乏人には役に立たなかった。それでいて我々がまずどうにかせねばならぬのは、少数篤志の家の愉快よりも、他の大変な多数の者の幸福ということである。西洋でもかつて慈善心に富んだ奥方といった者は、二頭立ての馬車に乗って一週に一度ぐらい、小銀貨を配ってあるいた人のことであったが、日本の旧式節約にもそんな例が多かった。たとえば廃物利用といって古葉書を編んで夏座蒲団を作り、女中を渋屋に遣わして渋を塗らせる。