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もめんいぜんのこと
木綿以前の事
柳田 国男
線上閱讀柳田 国男《木綿以前の事(もめんいぜんのこと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 177,586 字 · 348 頁
まず運動にも作業にも不便なような趣味ばかりを、上品として模倣したのであって、結局こんな行きがかりを打破するためには、西洋寝間着の細紐姿でも礼讃したくなるのが尤もだといえる。しかもこれをもって「日本はだめだ」という理由にしようとするのはまた大誤謬である。歴史に由って論ずれば、是はつまり我々の近い祖先の、当世風の選択の誤りであった。軽率無思慮の生活改良の災いと謂ってよいものである。本来の日本の些しでも与り知らぬことである。
知ったか振りをしてお聞き苦しいであろうが、少しばかりその実例を述べると、まず第一には我々の衣服である。羽織などという引掛かって仕方のないものを流行らせ、帯などという大袈裟なものを腰にまとい、奥様が帯をしているのやら帯が奥様をしているのやら、分らぬような恰好をしてあるき、或いは年中作り物のような複雑な頭をして、笠も手拭もかぶれなくしてしまったのは、歌麿式か豊国式か、とにかくについこの頃からの世の好みであった。いわばほんの一時の心得ちがいであった。深窓の佳人ならばそれもよかろうが、中以下の家庭の女がそんな様子をして生きて行かれるはずがない。