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もめんいぜんのこと
木綿以前の事
柳田 国男
線上閱讀柳田 国男《木綿以前の事(もめんいぜんのこと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 177,586 字 · 348 頁
六
偶々同じ語があっても、それは只至って限られたる意味に用いられる。たとえば普請の棟上げの日に投げる餅、死人のあった時に直ぐに造って供える団子などは、その製法がすでに今風になっていても、なおこれをシトギと謂う土地が全国に亘って相応に多く、或いはもう元の語音をなくして、ヒトギだのシトミダンゴだのという者もできている。手杵と小臼は現在はすでにすたれて、都会の小児などは月中の兎の絵か、そうでなければ家の紋に、杵と称して横に柄をつけぬものを見るくらいになっているが、是は一言でいうと『和漢三才図会』時代以後、二百年足らずの間の変遷で、主なる原因は石臼の普及、もう少し細かく言えば、臼の目立てと称して、一種尖って刃のついた金槌をもって石臼に目を切る職人が、農村の隅々まで巡回するようになった結果であり、豆腐の流行などとおおよそ歩調を合わせていると思う。
六
この点も私は飛騨の山村の実際が、はたしてこの推測に合うか否かを知りたいと念じている。石臼は薬材を細末にするために、また挽き茶の調製にも使われ、日本には相応に古い頃から存在したろうが、それが家々の食物調製にまで、利用し得られるには条件があった。