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もめんいぜんのこと

木綿以前の事

柳田 国男

線上閱讀柳田 国男《木綿以前の事(もめんいぜんのこと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 177,586 字 · 348 頁

青空文庫

二

問題の重要性は常の食物の上に認めて、是を詳かにせんとする史料は、異常食事の記録に求めていたのである。現代の学界がこの最も痛切なる消費経済の沿革に関して、いまだ多くのものを我々に教えなかったのは、一言でいうならばこの方法の誤謬からである。それで私はここに改めて、現在眼前に横たわっている書外史料、すなわち我々が自身の眼と耳とをもって、直接に観測し採録し得る社会事実をして、自らその履歴を語らしめようとするのである。

二

晴の食事の形の崩れた理由としては、いくつかの重要なものが挙げられるが、最初に気のつくことは是と常の食事との中間に、どっちつかずのものが現われてきたことである。ヒルマすなわち昼食というものが我々にも普通となり、いわゆる三度の食事を要するに至ったのは最も大きい変遷である。以前の食事が朝夕の二度であったことは、江戸期の学者もこれを説いている。奥羽で一般に一パイと謂い、九州ではゴ一つと称えたのは、ともに今日の桝目の約二合五勺であった。是が一人扶持の五合を二つに分けて、朝夕かたけずつ食わせた痕跡であることは疑いが無い。多くの農家には関西でゲビツ、東北でケシネギツなどという糧米櫃があって、その中にはほぼその分量を盛る瓢または古椀などが入れてあった。