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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《玉藻の前(たまものまえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 130,703 字 · 261 頁
二
彼は玉藻の様子を見とどけるために、山科からすぐに都へ馳せ付けたのである。彼は忠通の前に召し出されて、きょうの祈祷の結果を報告すると、重ねがさねの怪異におどろかされて、忠通も大息をついた。
「ほう、その古塚は二つに裂けたか。して、塚の底には何物が埋められてあったぞ」
「人の骨、鏡、剣、曲玉のたぐい、それらはひとつも見付かりませぬ。ただひとつ素焼の壺があらわれました」と、遠光は説明した。
「素焼の壺……」
「打ち砕いて検めましたら、そのなかにはひとたばの長い黒髪が秘めてござりました」
「女子のか」
「勿論のことでござりまする。泰親はその黒髪を火に焼いて、さらに秘密の祈祷を試みました」
「ほう、それか」と、忠通は思い当たったようにうなずいた。「その黒髪の焼け失すると共に、玉藻の形も消え失せたのであろうよ」
そのときには雲もだんだんに剥げて来て、陰った大空には秋の星が二つ三つきらめき出していた。
二
玉藻のゆくえは無論に判らなかった。おそらく彼女は熊武を引っ掴んで虚空遥かに飛び去ったのであろう。いずれにしても魔女は姿を隠したのであるから、頼長の一党は勝鬨をあげて祝った。