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たまものまえ

玉藻の前

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《玉藻の前(たまものまえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 130,703 字 · 261 頁

青空文庫

雨乞い

一

と、忠通はさびしく笑った。

「いえ、その左大臣殿と見事に張り合うて見せます」

「頼長と張り合うか」

「わたくしが殿上に召されましたら、左大臣殿とて……」と、言いさして彼女は、ほほと軽く笑った。

これはあながちに自讃でない。玉藻ほどの才女ならば、ひそめるその力を利用して、頼長めを殿上から蹴落とすことが出来るかもしれないと、忠通は頼もしく思った。

雨乞い

一

あくる朝、大納言師道は関白の屋形に召された。師道は雨を冒して来た。

「きのうも今日も降りつづいて、さりとは侘しいことでござる。殿には御機嫌いかがおわします」と、師道はねんごろに関白の容態をたずねた。

「とかくに勝れないでのう」と、忠通は烏帽子のひたいを重そうに押さえた。「きょうわざわざ召したはほかでもない。お身と忠通とは年ごろの馴染みじゃ。打ちあけて少しく申し談じたい儀があって……。近う寄られい」

それは玉藻を采女に推薦する内儀であった。師道にももちろん異存はなかった。

「至極の儀、わたくしも然るびょう存じ申す。当時関白殿下の御威勢を以って、彼女を采女にすすめ奉るに、誰も故障申し立つべきようもござりますまい」

「いや、そこじゃて」