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しんしゅうこうけつじょう

神州纐纈城

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《神州纐纈城(しんしゅうこうけつじょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 188,242 字 · 380 頁

青空文庫

五

そうしてきっとどこへ行っても、歓迎されそうに思われた。

「山を越して行きてえなあ」

憧憬れるように呟いた。山を越したらいい国があろう! 山国に育った少年の、おおかた起こす空想であった。

五

二人の若者が上って来た。

「おい、この辺で休もうじゃあないか」

浅黄の頭巾の若者が云った。肩から釣るした人形箱が、胸の上でガタンと揺れた。

「うん、そうして待ち合わそうぜ」

同じ色の頭巾に人形箱、少し若い方がすぐ応じた。

諸国を巡る傀儡師であった。

「甲府にゃあまったく驚いたなあ」

芒を折りながら年上の方が云った。「あぶなく癩患になるところよ」

「命からがらって云う奴さな」年下の方は汗を拭いた。「逃げられたのが不思議なくらいだ」

「可哀そうなのは藤六さ。とうとう一生を棒に振りゃあがった」

「よせばいいのに親切気を出して、病人の介抱なんかしたからよ」

「ここまで来りゃあ大丈夫だ」年上の傀儡師は芒を投げた。「俺らの役目も大体じゃあねえ」

「そうさ」と若い方は溜息をした。「細作係りという奴は、実際あぶねえ役目だからな」

二人はちょっと黙り込んだ。

投げ出した二人の足先から、ユラユラと陽炎が立ち上った。