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しんしゅうこうけつじょう
神州纐纈城
国枝 史郎
線上閱讀国枝 史郎《神州纐纈城(しんしゅうこうけつじょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 188,242 字 · 380 頁
三
間もなく暗黒が襲って来た。
暗黒の中を暗黒の船が、生死未詳の若者を載せて、何処とも知れず流れるのであった。
どの辺を流れているのだろう? 駿河国の方面だろうか? それとも甲州の側だろうか? どっちへ流れているのだろう? 東へだろうか西へだろうか?
もし時刻が真昼なら、春の日光が裾野を照らし小鳥が歌い、花が笑い、笠を傾けた旅人が、楽しそうに歩いているだろう。
そうして甲府の城下では、あの豪快な信玄公が、観桜の宴をひらいているかも知れない。
だがここには生活はなかった。
寒さと闇と死と恐れとが、――それも誰にも知られずに、執念く巣喰っているばかりであった。
三
船はひたすら流れて行った。
それは死への航海であった。
その時雷のような大音響が、行手の闇から響いて来た。
音のようすでその辺りに巨大な穴でも開いていて、そうして大河が驀地にそれへ落ち込んでいるようであった。
船は動揺し突き進んだ。
事実そこに大穴があるなら、もう船も庄三郎も、助かることは不可能であった。
大音響は近づいて来た。
と、闇の中にシラジラと、砕ける波の穂頭が、物の怪のように見えて来た。