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ずいひつ しんへいけ

随筆 新平家

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《随筆 新平家(ずいひつ しんへいけ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 213,575 字 · 424 頁

青空文庫

屋島合戦前夜の、田辺の位置や重要性は、前回にも書いたが、ぼく自身は、あの辺を何度か通過しながら、じつは田辺には下車してみなかった。多くは「熊野史」「新宮市誌」「田辺町誌」などに拠って書いたのである。現在の闘鶏神社の附近には、弁慶の遺蹟や遺物などもあり、土地には「弁慶は田辺の生まれ」という伝えもあるが、これは「新・平家」の内でいつか書いたことがあるから、ここでは述べない。(三〇・三・六)

*

一ノ谷から、二次の屋島合戦まで、その間、約一年は、戦争もなかったのである。で、古典平家には、その期間の記述は何もない。

けれど、じっさいの合戦は、一ノ谷でも屋島でも、また壇ノ浦でも、事実、二日か三日の短い戦闘に過ぎないのだった。だから本当は、二日か三日に過ぎない修羅の時間よりは、一年にわたる空白期間の方に、より多くの事件や問題も起こっていたにちがいない。

近代から現代もおなじように、競争のない無事な日の中に、かえって、その素因やら陰性な活動があったものとぼくは観たい。――ここ数回を割いて、自分はそれを書いてきたが、次回からは、いよいよ、義経の屋島攻めという本題に入ることになろう。