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ずいひつ しんへいけ

随筆 新平家

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《随筆 新平家(ずいひつ しんへいけ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 213,575 字 · 424 頁

青空文庫

須磨寺寝詣での記

ない方がむしろ不自然であろう。(二九・七・一一)

須磨寺寝詣での記

夜は、舞子ホテル。

着くやいな、諸兄に失礼して、ぼくは先に寝込んでしまった。夜食は、りんごの汁一杯。

だが、その晩は、春海さんの酒盃解禁という妙な私的記念日にあたり、東京からの約束だったので、諸兄が膳についた時だけ寝床を出て、うやうやしく、春海氏に一献お酌をしてあげた。

事の次第は、健吉画伯の写生帖に、名文が書かれてあったから、少々楽屋落ちなれど、それを借用して読者の御不審を解いておくことにする。

六月一日、舞子ホテルにて、雨。

春海さん禁酒満一年、今日解禁の日とありて、吉川先生の色紙贈呈(舌洗の二字なり)の後、祝杯をあげる。その満悦ぶり、鯉の吹流しみたいですな、と川辺さん云ふ。一杯一杯。側で見ていても、実に愉快さうなり。貴重な水が身体の各部分へ公平に配分されつゝあるが如く、また赤くなるにつれ例の愉快なる口吻が洩れ出る順序は、街に号外の行きわたる趣きにも似たり。(健吉、文)

街に号外云々は、健吉さんの文才、絶妙というべきである。もって状景は想像に難くあるまい。

雨は翌日も降りやまず、ぼくの腹ぐあいも、依然、五月雨紀行にふさわしいままである。