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ずいひつ しんへいけ
随筆 新平家
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《随筆 新平家(ずいひつ しんへいけ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 213,575 字 · 424 頁
こう見て来たうち、御陵管守の小屋の裏崖に沈んでいた一基の燈籠だけがとても古態であった。おそらくあれだけが平家時代に近い物であろう。石だといっても、近ごろの石造美術マニヤときては、大同、雲崗あたりの石仏の首すら運んでくる。大事にしてくださいと、よけいなおせっかいを告げて、山の人々と別れた。
登りにはウンウンいったが、降りとなれば、ぼくだって、負けはしない。――というつもりでいたが、例の石段また石段へかかって、靴をすべらせ、だいぶ勢いよく、二、三段、ころんでしまった。
マックラウド氏に、抱き起こされ、腰をなでまわす。マ氏「痛い?」日本語で訊く。もちろん非常に痛い。しかし国民性的ヤセ我慢がこのさいも出て「すこし痛い」と、答えてしまう。「ウーム痛い」という咄嗟の表情ができないで「すこし」なんていうくらいなら、やはり「全然痛くない」といってしまった方がよかったと後で思う。麓まで、腰も痛いし、あと味もわるい。
麓へ出ると、急に暖国を感じる。この辺の道ばたで見かけた蜜柑は、みな盃の糸底ほど小粒である。蜜柑というよりは、平安朝貴族の珍重した“非時香果”とか“橘”と呼ぶ名の方がふさわしい。