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ずいひつ しんへいけ
随筆 新平家
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《随筆 新平家(ずいひつ しんへいけ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 213,575 字 · 424 頁
伝説かもしれない。
けれど、平家の世ごろ、ここの社殿にいた内侍たち(他社でいう神子の乙女のこと)だの徳大寺実定の口ウラにさえ、ころりとだまされて、わが子の栄職を譲らせてまで、実定に左大将の地位を与えている清盛である。彼には、どこか人のいい抜け目と、情にもろい一面があった。高松市で会った酒好きのマックラウド氏が、杯を手に自身のことを「少しクリスチャン……」といった、あの少し――と同質なものが、清盛にもあったのである。そういう史証は、ほかの場合にも見ることができる。
康頼石の話は、全部がほんとでないまでも、根からの根なし草とも思われない。悪いことは、作り事と知れきっているウソまで世に信ぜられ、よい半面はとかく語られもしないのである。もっとも、清盛に似た“損な男”は白骨の世界ばかりでなく、お互い生きている同士の世間にも、ずいぶん同型の存在は少なくない。
ここの厳島の内侍を、清盛は福原の別業へまで連れて行っている。眉目美きひとりは、彼の寵姫でもあった。なにしろここには、緋の袴に白袖の神の仕え女が「――かもめの群れ居たるによく似たり」と旧記にもあるほどたくさんにいたらしい。