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ずいひつ しんへいけ

随筆 新平家

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《随筆 新平家(ずいひつ しんへいけ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 213,575 字 · 424 頁

青空文庫

何か、仕事に楽しみきれた時代の雰囲気が世間にあったにちがいない。思うに、無数の同時作家の手で作られたこれらの美術や工芸も、何百年の時を経て見れば、人その者が作者ではなく、作家は平安末期というその時代であったといういい方もできると思う。

こことして有名な例の“平家納経”の数巻も陳列されていた。開かれている部分の数行の写経文字は、清盛、頼盛の筆であると説明が加えてある。

はしなくも、清盛その人に会ったような気がする。頼盛の筆蹟と見くらべて、興味が尽きない。そして、ふしぎなことだ。何がといえば、これが清盛の筆だとすれば、ぼくらが小学校の歴史知識から観念づけられて来た清盛とは、およそ人ちがいをしそうな優雅な書風である。経巻なので、もちろん、慎んでは書いたのだろうが、文字ごとの筆切れに、左流れのクセがあったりして、らくな気持もうかがわれながら、覇気らしい点が少しもない。むしろ、頼盛の筆の方こそ、美しさにも富むが、才気が目につく。

巻の表紙や軸の金具もだが、見返しのトビラの絵画は、またなくすばらしい。従来、美術批評家たちが、讃美の辞を尽して来たものだ。これあるがために、平家納経の名も高からしめているものでもある。