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ずいひつ しんへいけ

随筆 新平家

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《随筆 新平家(ずいひつ しんへいけ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 213,575 字 · 424 頁

青空文庫

粗野はたまらないが、若さにたいする羨望を感じる。

――念のため、註しておく。時は昭和二十六年のこと。出発は十月十日。

この日より向かう七日間の予定で、鬼怒川上流を経、北会津から新潟、北越から北信濃へ、というコースで旅立ったわけ。

子供っぽい感想だが、電車というのは、いくら早くても長く乗っても、旅行に出た感興になって来ない。飛行機なども、その感がある。国内程度では、地面が変った気がするだけで、大阪へ来た、九州へ着いた、という気もしない。巴里まで行ったら、さあ、どうだか。

どうも、ぼくら明治の子は、やはり汽笛一声新橋式に、精煉の悪い煤煙にいぶされて、車窓初めて旅情を感じる習性がいまだに残っているものとみえる。こういうぼくの如き人間の素質を封建的だといわれるのは、むりもない。煤煙を恋しがるような習性とは、いいかげんに袂別しなければと、自省する。

なにしろ、あっけない。鬼怒川駅下車、十一時三十八分、もう旅館の昼食。

箸をおいたり、また、立ったりは、高山君。これからすぐ栗山渓谷へ行く自動車の手配らしい。「どうしても一台しかできません」と思案中、治山事務所長の太田重良君がひょっこり現われ、「トラックをまわしましょう」