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ずいひつ しんへいけ

随筆 新平家

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《随筆 新平家(ずいひつ しんへいけ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 213,575 字 · 424 頁

青空文庫

如何がはせむとぞ呆れける。その夜半ばかり、富士の沼に、幾らもありける水鳥どもが、何にかは驚きけむ、一度にばつと立ちける羽音の、雷、大風のやうに聞えければ、平家の兵ども、あはや源氏の大勢の向ひたるは――”と名手の声曲で聞かせられると、真に迫ること一倍である。おかしくもなく、語り継がれて来た所以であろう。

だが、今日の読者には、そのまま、呑みこめないにきまっている。古典を古典のまま国文学的に味わうぶんには別だが、キャンプ群の中学生でも、鳥の群を人間と間違えて腰を抜かしはしまい。いくら平家武者が柔弱にしろ、何万という甲冑の集団が、水鳥に驚いて、よろい兜や弓矢を打ち捨て、都まで逃げ走ったなどという作為は、余りに幼稚すぎよう。これは、どう書いても、現代下では、滑稽文学にもならない。

へんなもので――とまたくり返すが、きのうまでの史学の大家たちも(悪いから書名や名はあげない)こういう所はあっさり“水鳥の羽音”のせいにして通過している。しかし、近年の若い学究間の史眼がこんな虚構を認めていないのはいうまでもない。雑誌「自然」でも、荒川秀俊氏が“戦争と飢饉・疫癘”の一文中にそれを指摘され、「平家を走らせたものは、水鳥でなく治承四年から養和へかけての飢饉である」