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あらくれ

あらくれ

徳田 秋声

線上閱讀徳田 秋声《あらくれ》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 119,451 字 · 236 頁

青空文庫

お島は不思議そうに、そこに見えている人達の姿を凝視めた。

S――と云うその町へ入った時にも、小雨がしとしとと降そそいでいた。停車場を出て橋を一つ渡ると、直ぐそこに町端らしい休茶屋や、運送屋の軒に続いて燻りきった旅籠屋が、二三軒目についた。石楠花や岩松などの植木を出してある店屋もあった。壮太郎とお島とは、そこを俥で通って行った。

町はどこも彼処も、闃寂していた。

俥は直に大通の真中へ出ていった。そこに石造の門口を閉した旅館があったり、大きな用水桶をひかえた銀行や、半鐘を備えつけた警察署があったりした。

壮太郎の家は、閑静なその裏通にあった。町屋風の格子戸や、土塀に囲われた門構の家などが、幾軒か立続いたはずれに、低い垣根に仕切られた広々した庭が、先ずお島の目を惹いた。木組などの繊細いその家は、まだ木香のとれないくらいの新建であった。

留守を頼んで行った大家の若い衆と、そこの子供とが、広い家のなかを、我もの顔にごろごろしていた。

「へえ、こんな処でも商売が利くんですかね」

部屋に落着いたお島は、縁端へ出て、庭を眺めながら呟いた。

「この町は先ずこれだけのものだけれど、居周には、またそれぞれ大きな家があるからね」