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あらくれ

あらくれ

徳田 秋声

線上閱讀徳田 秋声《あらくれ》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 119,451 字 · 236 頁

青空文庫

五十五

「郵便が来ているよ」

不意にその主人が、湯殿のなかへ顔を出して、懐ろから一封の手紙を出した。

それは王子の父親のところから来たのであった。

「へえ、何でしょう」

お島は手を拭きながら、それを受取った。そして封を披いて見た。

五十五

山に雪が融けて、紫だったその姿が、くっきり碧い空に見られるようになる頃までに、お島は三度も四度も父親の手紙を受取った。

冬中閉されてあった煤けた部屋の隅々まで、東風が吹流れて、町に陽炎の立つような日が、幾日となく続いた。淡雪が意いがけなく、また降って来たりしたが、春の日光に照されて、直にびしょびしょ消えて行った。樋の破目から漏れおちる垂滴の水沫に、光線が美しい虹を棚引せて、凧の唸声などが空に聞え、乾燥した浜屋の前の往来には、よかよか飴の太鼓が子供を呼んでいた。

「お暖かになりやした」

浜屋の炉端へ来る人の口から、そんな挨拶が聞かれた。

ちらほら梅の咲きそうな裏庭へ出て、冷い頸元にそばえる軽い風に吹かれていると、お島は荐に都の空が恋しく想出された。

「御父さんから、また手紙が来ましたよ」

人のいないところで、帯の間から手紙を出してお島は男に見せた。