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パンドラのはこ

パンドラの匣

太宰 治

線上閱讀太宰 治《パンドラの匣(パンドラのはこ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,644 字 · 386 頁

青空文庫

」と言って笑った。こんな会話も、繁夫さんたちが聞いたら、さぞ鼻持ならない、気障ったらしいもののような気がするのだろう。そんなら僕たちは、どうすればいいのだ。僕たちは、ちっとも思い上ってなんかいないのだ。いつでも、とても遠慮をしているのに。ああ、東京へ帰りたい。田舎は、とてもむずかしい。ゴルフをつづける気力も無く、僕たちは悲しい冗談を言い合いながら、家へ帰った。

お昼には、また一つ失敗した。これは大きな失敗だった。しかも、それは、一から十まで僕ひとりが悪かったのだから、たまらない。

お昼ごはんをすましてから、僕は兄さんをお庭にひっぱり出して、写真をとってあげていたら、垣根の外で石塚のおじいさんの孫が二人、こそこそ話合っているのが聞えた。

「おらも、三つの時、写真とってもらっただ。」男の子が得意そうに言う。

「三つん時?」妹の声である。

「そうだだ。おらは帽子かぶってとっただ。だけんど、おらは覚えてねえだ。」

兄さんも僕も噴き出した。

「遊びにいらっしゃい。」と兄さんは大きい声で言った。「写真をとってあげますよ。」

垣根の外は、しんとなった。石塚のおじいさんは、昔この別荘の留守番をしてくれていた人で、いまもやはり此の辺に住んでいるのである。