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うえすぎけんしん

上杉謙信

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《上杉謙信(うえすぎけんしん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 129,102 字 · 256 頁

青空文庫

「お答え申しあげよ」

と、促した。

下野は、片眼を、ちらと、貴賓に向けて、

「おたずねを賜わって、畏れいりまする。祖先斎藤蔵人は、名もなきものにござりますが、義貞公お旗上げの折より、御一族の脇屋殿の手について、鎌倉攻めに参加し、後、分倍河原のたたかいに、討死をとげました。――首を埋めた墳は故郷の宅址にありと聞き、同じ土地の出の衆五、六名を誘って、あちこち尋ねましたが、よう分りません。……茫々、いずこも田や草原と変り果て、土地の農夫どもすら、たれも弁えおりません」

「では、越後へ移られてからは、もう数代になるのじゃな」

「四代になりまする」

「ああ、それでは……。越後にはなお、新田一族の裔が多くおられますか」

これは、謙信に向って、直接に問うたのである。謙信は、思案までもなく、

「ここだけでも、下野を初め、五、六名もおるとあれば、春日山城には、まだ何十家も、同じ流れのものがおりましょう」

と、すぐ答えた。

前嗣は、大きくうなずいて、

「さこそ。さこそ」

と、繰返し、

「ほまれある御裔とも思いもよらず、さきほどからの率爾はゆるせ。盃をとらそう。下野とやら」

と、自身から進んで来ないばかりにいって、手をさしのべた。