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せかいかいきじつわ「じょぶん」

世界怪奇実話

牧 逸馬

線上閱讀牧 逸馬《世界怪奇実話(せかいかいきじつわ「じょぶん」)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 251,305 字 · 498 頁

青空文庫

この場合がそうで、それに端を発して、この、人間の歴史初まって以来最も不可解な一つとされている「消えた花婿」事件の展開となったのだが、僕はこれを、最も不可解な中でも最も不可解な出来事であるとするに、※(「足へん+寿」、第4水準2-89-30)躇しない。

男盛りといった、厳丈な体格の中年の紳士が、向うからやって来てエンマと擦れ違った。そして、通りすがりにちょっと、エンマへ微笑して行ったのだ。エンマ・ダッシュも、例の得意の流眄を呉れて、にっこりしたことは勿論である。男に聞えるように、煙りのような陽気な笑い声を立てて、何気なくとおり過ぎた。暫らくその儘の歩調であるいて行ったが、直ぐ男が引っ返して来ることを期待するかのように、それとなく足を緩めて、待ち合わせるような態度を示した。

立ち停まって後を見送っていた男は、果してこの招待的な意味を汲んで、廻れ右をした。急ぎ足に、たちまち追いついてきた。軍人のような、陽に焼けた顔の、立派な紳士である。

騎士的に、慇懃に帽子を脱って、

「もし人違いでしたら御免下さい」てきぱきした、男らしい声だ「確かに何処かでお眼に掛ったような気がするんですが――。