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せかいかいきじつわ「じょぶん」

世界怪奇実話

牧 逸馬

線上閱讀牧 逸馬《世界怪奇実話(せかいかいきじつわ「じょぶん」)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 251,305 字 · 498 頁

青空文庫

5

平べったい醜悪な顔に眼が窪んで、厚い口唇が強情に歪んでいた。牛のような鈍重な身体を、小淡泊した黒の日曜着に包んで、外套は、青味がかった灰色だった。その洋服も外套も、およそ身に適っていない。滑稽なほどぶくぶくなものだった。

が、仲間の信者達は、このホテリング補祭――今夜の就任式で長老ホテリングとなるのだが――の不恰好な身体つきや、映えない男振り、と言うよりも、実際人相の悪い容貌などに、誰も格別関心を持つ者はなかった。皆長い間信仰の友として親しく交際して来て、自分達のあいだに仲なか得難い、穏厚実直な人物であることを熟知しているからだった。

5

事実、補祭 Adolph Hotelling は、常に恭敬と謙遜の態度を忘れない、おだやかな紳士だった。このオウオソ町に九年も定住し、以前はソルト聖マリイ Sault Ste. marie ――またミシガンが仏蘭西の植民地だった頃、一六六八年にマルケットがジュスイット教の布教所を置いたので歴史的宗教的に有名な土地――にも住んでいたことがあるが、個人的な悪評など、小指の先程もついぞ立てられたことがなかった。そのソルト聖マリイでも、ホテリングは模範的な教会員であり、伝道事業の献身的な活動家だったし、其の後一時カルカスカ郡 Kalkaska の奥へ隠棲して百姓をしていたのが、