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ごべんのつばき

五瓣の椿

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《五瓣の椿(ごべんのつばき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 149,721 字 · 296 頁

青空文庫

であなたを騙したことがあるし、あなたが自分のことをしらべていると聞いたので、ぜひあなたの手でお繩にしていただきたい。おいでになるまでここを動かずに待っているが、いらっしゃるまえに同封の書状を読んでおいてもらいたい。こんどのことはこみいった事情があって、口ではよく云いあらわせないかもしれないと思い、前後のゆくたてを書きとめておいたのである。文章もたどたどしい字も読みにくいだろうが、どうかひととおり眼をとおしておいていただきたい。という意味のことが書いてあった。

「本所枕橋の近く、松平越前さまの横のむらた、――茶屋だな」千之助はところ書きを読むと、下唇を噛んで呟いた、「やっぱりおしのという娘だったのか」

彼は机の上を片づけて、その書状を読みはじめた。

とそこに書かれていた告白は異常なもので、とうてい十八歳の娘などにできることとは思えなかったが、同時にまた「十八歳」という年齢の純粋な潔癖さがなければできなかったろう、とも思えるものであった。

彼女は父に対する深い愛情を切々と訴え、特に父が「山椿」について語った思い出ばなしに感動したことを、克明に書いていた。