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ごべんのつばき
五瓣の椿
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《五瓣の椿(ごべんのつばき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 149,721 字 · 296 頁
七
おしのの顔がさっと白くなり、あまりに強く噛んだためだろう、下唇に血の滲むのが見えた。
七
おしのはそこを去ろうとしたが、ふと島村東蔵の姿を認めて、立停った。東蔵は松飾りのところに立って、こちらに横顔を向けていたが、明らかに眼の隅で、こっちのようすを見ているようであった。
「あの人と話をさせて」とおしのは佐吉に云った、「手間はとらせないわ、ちょっとだけ訊きたいことがあるの、いいでしょ」
「沢田屋とですか」佐吉は唇を尖らせた。
「ほんのちょっとだけ、お願いよ」とおしのは云った、「店の隅でもいいの、立ち話でいいからちょっと二人だけにさせて」
佐吉は東蔵のほうへゆき、低い声で話していたが、東蔵はすぐに頷いて、そのまま桝屋の店へはいってゆき、佐吉は戻って来て、どうぞと片手を振った。
「二階の桐を御存じですね」
「左の端だったかしら」
佐吉は頷いた、「先にいらしってて下さい、あとからすぐにやります、但しなにもお構いはできませんから」
「あたしも帰りをいそぐのよ」
おしのは駕籠屋に、待っていてくれと云い、手早くなにがしか紙に包んで、佐吉に渡した。佐吉はそ知らぬ顔で巧みに受取り、おしのを店の中へ案内した。