輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

みやもとむさし

宮本武蔵

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,809 字 · 369 頁

青空文庫

――そんなこと、いい出してくれなければよいのに、と城太郎の無心にいったことばが辛くて恨めしくなってしまう。

一日として、武蔵をわすれ得ないことが、お通には苦しい重荷だった。なぜそんな重荷は捨ててしまわないのか――そして平和な郷で、よい女房になりよい子を生もうとしないのか――とあの無情な沢庵はいうが、お通の耳には、恋を知らない禅坊主を憐れむ心こそ起るが、抱きしめている今のものを、心から捨てたいなどとは夢にも思われないのである。

恋は、虫歯のように、どうにもならない傷みを持つ。ふとまぎれている間こそ、お通も何気なくしているが、思い出すと、矢もたてもなくなって、的がないまでも、諸国諸街道を足にまかせて捜し歩き、武蔵の胸へ顔を当てて泣きたい。

「……ああ」

お通は、黙って歩きだした。――何処に、何処に、何処に? ――およそ生きとし生ける者の数多な悩みのうちでも、焦れたくて、やるせなくて、どうにもならない悶えは、会えない人に会わんとする人間の焦躁であろう。

ポロリと、涙をこぼしながら、お通は自分の胸を抱きしめて、黙々と足を運んでいた。――その手とその胸との間には、汗くさい武者修行風呂敷と、柄糸の腐っているような重い大小がかかえられている。