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みやもとむさし

宮本武蔵

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,809 字 · 369 頁

青空文庫

三

子にはなんの科もないはず、親の罪は親にこそ酬え、南無かんぜおん菩薩、城太郎のうえに大慈の御眸ありたまえ)

――蕎麦掻きを焦げつかないように、そっと箸で浮かしながら、親と名のつく者の弱い心の底から祈りをこめていると、

「――嫌あッ!」

突然、寝ている朱実が縊め殺されでもするようにさけんで、

「ち、ち、ちくしょう……」

見れば、寝息のうちに眼をふさいでいながら、木枕に顔押しつけて、さめざめと泣いているのであった。

三

自分のうわ言に、朱実は、眼をさまして、

「おじさん、わたしいま、寝ているうちに何かいいましたか」

「びっくりしたわさ」

丹左は、枕元へ寄って来て、彼女の額を拭いてやりながら、

「熱のあるせいじゃろう、ひどい汗だ……」

「何を……いったでしょう」

「いろいろ」

「いろいろって?」

朱実は熱ッぽい顔をよけいに赧らめて恥じるように、紙蚊帳の衾を、その顔へかぶった。

「……朱実、おまえは、心で呪っている男があるのじゃな」

「そんなこと、いいまして」

「ウム。……どうしたのだ、男に捨てられたのか」

「いいえ」

「だまされたのか」

「いいえ」

「わかった」

丹左が独り合点すると、朱実は急に身を起して、